不動産投資
2022.09.12

知っておきたい不動産投資につきまとう8大リスク。回避策は?

知っておきたい不動産投資につきまとう8大リスク。回避策は?

どのような投資にもリスクはつきものです。不動産投資は、小さな金額から始められる株式投資などとは異なり、比較的大きな金額を投じるため不安を抱えて投資への第一歩を踏み出せない方も多いことでしょう。
しかし、生じるリスクをあらかじめ知っておけば、リスクを最小限に抑えることや回避策を立てられるかもしれません。本記事では不動産投資につきまとう8大リスクを紹介するほか、リスク回避策まで解説します。

この記事の目次

8大リスクの概要

まずは、8大リスクがどのようなものであるのか、大まかに掴んでおきましょう。
不動産投資にまつわる8大リスクといわれるものは、以下の通りです。

  1. 空室のリスク
  2. 家賃の下落リスク
  3. 家賃滞納のリスク
  4. 修繕のリスク
  5. 天災のリスク
  6. 賃貸管理会社のリスク
  7. ローン金利上昇のリスク
  8. 不動産価格の下落のリスク

上記の8つのリスクのうち、いくつかを想像できた方はいるかもしれません。
しかし、不動産投資をこれから始める方の中で、8つ全てのリスクを挙げられた方は少ないのではないでしょうか。
これから、この8つのリスクのそれぞれの内容について解説します。

リスク1:空室

不動産投資を始めようとしている方なら、誰もが浮かんでくるのが、この空室のリスクではないでしょうか。
購入した物件が空室であれば、家賃はもちろん入ってきません。利益が得られないのに、維持・管理するための経費が発生するという、最悪の事態となります。

空室リスクを回避するには賃貸需要が安定したエリアを選ぶ

空室のリスクを回避するには、人口の増減数が多いエリアを狙うことです。このリスク回避策に拍子抜けする方も多いのではないでしょうか。当たり前のことともいえます。
しかし、日本は2008年以降、人口が減少し始めています。現在、人口の多いエリアであっても、安定した不動産投資を行うには人口が減少するようなエリアを避けなければなりません。不動産投資は、今だけではなく将来的にも賃貸の需要を見込めることが重要です。
これからは、東京以外のエリアではアパートやマンション経営が成立しなくなるかもしれません。東京23区のように人口増減数の多いエリアを狙うことが空室リスクの回避には有効といえます。

ワンルームなら空室期間が短い?

空室リスクを回避するには、投資用の不動産の中でもワンルームマンションを選ぶこともポイントです。ワンルームは一人暮らし用の部屋のため、入居を決定する人が1人です。入居者が判断すれば、すぐに入居が決まります。
逆にファミリー用物件であれば、家族の意見が割れると、内覧は入るものの入居の決定までに時間がかかります。入居が決まるまではその部屋は空室となってしまいます。
大学生や専門学校生がターゲットにするようなワンルームは、学校の合格シーズンになればあっという間に埋まっていくといいます。春休み中に現地を訪れて選んでいたのではいい物件は残っていないと、物件を実際に見ずに決めていくのです。

入居者募集が得意な管理会社を選ぶ

これまでお伝えしてきたような空室リスクを回避できる物件を選んだとしても、管理を任せる賃貸管理会社の力量によって、空室が埋まる速さは異なります。入居者募集のノウハウを持ち、大家の気持ちを理解し、空室時間を短くするために動いてくれる賃貸管理会社を選びましょう。

リスク2:家賃の下落

投資した不動産は、購入時が一番新しい状態であることを認識しておきましょう。物件は経年劣化していき、それに併せて家賃は下落していきます。
三井住友トラスト基礎研究所が2013年に発表した調査「経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由」では、建築されてから日の浅い、いわゆる築浅物件が、建築されてからだいぶ年月を経た後に家賃がどのくらい変化するかというデータを示しています。その調査によると、新築から10年間を経ると、ピーク時から20%ほど家賃が下がるといいます。

家賃下落を回避するには高収益物件を選ぶ

「経年劣化による家賃の下落は避けられない」と諦めるのは早いといえます。家賃下落のリスクを回避する方法があります。それは、高収益物件を選んでおくことです。
高収益物件とは、物件の価値が維持できる物件で、その最大の要素は立地です。最寄り駅から物件までの距離が短い、いわゆる「駅チカ物件」を選ぶことです。
将来的にも賃貸需要を見込むことができるので、資産価値を維持することができます。

家賃下落リスクの少ない中古物件を選ぶ

先ほど紹介した調査において、築年数を経れば家賃が下落していくと伝えました。しかし、築20年が経過すると、実は、家賃の下落幅が小さくなっていきます。
下落幅が小さくなる築20年以上の物件を選べば、家賃が下落しづらいので、不動産投資の運用の計画が立てやすくなります。家賃下落幅の小さな中古物件を選ぶことで、不動産運用の見通しが立てやすくなります。
家賃下落リスクの低い中古物件を選んだら、競合物件に勝つためには今、人気のある間取りにリノベーションするなどのひと手間が必要となる場合もあります。

リスク3:家賃滞納

空室リスクを避けたとしても、入居者が家賃を滞納した場合には家賃収入を得ることができません。満室であっても利益を生み出すことができないのです。
家賃滞納をする入居者の中には、うっかり家賃を払い忘れたならまだしも、払う気があってもお金がない人や、そもそも家賃を払う気がない人もいます。家賃滞納のリスクを回避するための方法を紹介します。

家賃滞納リスクを回避するには入居審査が肝心

家賃滞納リスクを回避するためには、入居前の対策が肝心です。不動産管理を依頼する賃貸管理会社に入居前の審査基準を厳しくしてもらい、家賃を滞納してしまいそうな人を入居させないようにしましょう。
また、入居申込の連絡を賃貸管理会社から受けた場合には、賃貸管理会社に入居者審査の一切を任せるのではなく、家賃を滞納しそうではないかと自分でも判断することをおすすめします。家賃滞納の不安があれば、入居を断るという選択をするのも大切です。

家賃を滞納した翌日には対処

それでも家賃滞納が発生してしまったら、すぐに入居者に督促しましょう。「いつか払ってくれるだろう」という甘い認識が、その後大きなトラブルに発展する可能性があります。

「不動産投資で督促まで行うのか」と驚いた方もいるでしょう。オーナー自らが入居者に督促せずとも、賃貸管理会社に物件の管理を委託しているのであれば、オーナーに代わって賃貸管理会社が対応してくれるはずです。

家賃保証会社へ加入して滞納を防ぐ

家賃滞納のリスクに有効なのが、家賃を保証してくれる「家賃保証会社への加入」を入居者に求めることです。家賃の滞納が生じたら、家賃保証会社がオーナーに家賃を補償してくれます。
この家賃保証会社への手数料の支払いは、入居者が行うため、オーナーに負担がないのが魅力といえます。家賃の補償だけでなく、家賃保証会社は入居者への取り立ても代行します。
家賃保証会社は、賃貸経営をスムーズにしてくれる不動産投資のパートナーといえるでしょう。

リスク4:修繕

どのような物件でも、ある程度時間を経れば修繕する必要が出てきます。例えば、キッチンや風呂場、トイレなどの水回りは使用頻度が多いため、破損・汚損や摩耗なども生じます。どれもリフォームにはかなりの費用がかかります。
具体的な修繕のタイミングと費用を挙げると、1Kの木造アパートであれば、床の修繕が10年ごとに30万円ほど、ガスや電気設備であれば15年ごとに30万円、給排水設備給水管や排水管の交換が25年ごとに200万円ほどかかるといわれています。
長期間の修繕以外にも、入退去時には原状回復のための修繕やクリーニング費用として20万円ほどかかるのが相場です。そのほかにも、外壁やエレベーターなど大規模な修繕を行う場合には多額の費用がかかります。

修繕する必要の少ない丈夫で長持ちする物件を選ぶ

修繕は定期的に行うものではありますが、修繕する必要の少ない丈夫で長持ちする物件を選ぶことが修繕のリスクを減らす策といえます。
RC造マンションの寿命は60年以上といわれています。木造アパートの法定耐用年数・22年と比較すると長いです。しかし、寿命が長いRC造マンションであっても、管理がずさんであれば、老朽化は加速度的に進んでしまいます。メンテナンスが適切に行われている物件かどうかを判断するのも不動産投資をするなら必要なチェック項目といえるでしょう。

重要事項調査報告書をチェックしておく

適切なメンテナンスが行われている物件かどうかを判断するのに役立つのが「重要事項調査報告書」です。この書類には過去の修繕履歴だけでなく、修繕積立金の総額、管理費、積立金の滞納状況のほか、今後の修繕計画が記載されています。
建築から時間がたっているにも関わらず、これまで修繕が行われていなかったり、修繕積立金が十分に貯まっていなかったりする場合には要注意です。不動産投資を始めてすぐに修繕が行われ、余計な経費がかかる可能性があります。

リスク5:天災

日本は災害大国といわれていますので、不動産投資をした物件にも常に天災のリスクが付きまとっています。天災と一口に言っても、さまざまなものがありますので、主な天災が引き起こすリスクを確認しましょう。

地震のリスクに備えるには

大きな地震が発生した場合、建物の倒壊リスクがあります。建物が倒壊してしまうと、家賃収入を得られないだけでなく、その建物を復旧する、あるいは壊す費用が生じます。国内にはさまざまな断層や活火山が存在し、地震はいつどこで発生するのか予想がつきません。どのエリアにある不動産物件でも、地震のリスクに備える必要があるでしょう。
地震のリスクに備えるには、地震による損害を補償してもらえる地震保険に加入すること、新耐震基準の物件を選ぶことのほか、地盤の強い地域を選ぶことです。

火災のリスクに備えるには

火災のリスクを回避するには、キッチンの構造を火災が起こりにくいような仕様にするだけでなく、火災が発生した時に消防車の消火活動を妨げる狭い場所や、近隣への延焼のリスクが高い木造の建築物が多いエリアを避けるようにしましょう。
また、鉄筋コンクリート造のマンションのように、木造よりも燃えづらい構造の物件を選ぶようにしましょう。
もちろん、火災保険に加入して備えておくことも大切です。火災保険の補償内容や付加したプランが物件の実態と見合うかどうか、定期的に見直しもしておきましょう。

そのほかの災害に備えるには

ほかにも近年は気候変動により、台風や大雨被害も増えてきています。不動産投資物件を検討するときにはハザードマップをチェックしておきましょう。
また、非常時の経路や非常用電源など、物件の防災対策も忘れずに確認しましょう。
そのほか、落雷や台風、大雨に備えられる保険への加入も検討するのがおすすめです。

リスク6:賃貸管理会社の倒産

物件以外のリスクの中には賃貸管理会社の倒産リスクもあります。このリスクを軽減するためには、数ある不動産会社の中でも、信頼のおける会社を選ぶことが重要です。

倒産するリスクが低い会社の選び方

信頼できる賃貸管理会社の見分け方としては、管理戸数が多いこと、「賃貸住宅管理業登録制度」に登録していること、上場の有無や会社の歴史などが挙げられます。
まず、管理物件数が多ければ手数料収入が多いので経営は安定しやすいといえるでしょう。
次に、賃貸住宅管理業登録制度とは、200戸以上の賃貸住宅管理業を営む事業者に対し国土交通大臣の登録を義務付けています。国のお墨付きの会社といえますので、信頼性が高いといえるでしょう。
最後に、上場していることは正しく経営されていることの証明になりますし、歴史のある会社であれば長年経営が続けられてきたため、多少のリスクも乗り越えてきた経営力のある会社といえます。

リスク7:ローン金利の上昇リスク

近年は日本政府はゼロ金利政策を続けており、超低金利であることは多くの方が認識していることでしょう。
しかし、永久に続くとは限りません。中長期的には金利の上昇は不可避と思ってもいいでしょう。
不動産物件の購入後に金利が上昇して借入返済額が大きくなってしまうと、毎月の家賃収入より借入返済額が大きくなるといった最悪の状況に陥る可能性があります。

ローン金利上昇リスクを回避するには元金均等返済を選択

ローンの返済方法を利息支払が多い元利均等返済ではなく、元金均等返済にして借り入れた元金返済を低金利のうちに早く進めて、今後の金利上昇の影響を受けにくくする方法も対策の一つです。

固定金利を選択する

変動金利と比較すると、固定金利の金利水準は、その期間によって0.5%から1.2%ほど高くなる傾向です。今後、金利が上昇していくリスクを考えると、金利の低いうちに10 年間固定金利型を選択することが良策に思えます。
しかし、不動産投資の場合は売却をする可能性があります。いいタイミングで売却をしようとしたとき、固定金利の期間内に一括返済をするとペナルティを生じさせてしまうのです。不動産投資の場合は、自分の投資戦略に見合った金利の選択が必要です。

リスク8:不動産価格の下落

最後に解説するリスクは不動産価格の下落です。不動産投資は、物件を末永く維持管理して家賃収入を得るだけではなく、高値となったときに売却して利益を出すことも含まれます。
不動産投資は、出口戦略も重要なのです。
しかし、投資物件の価値を下落させてしまうさまざまな要因があります。出口戦略に非常に重要なので、一つずつリスク要因を説明します。

不動産価格が下落する4つの理由

不動産価格が下落する理由には大きく分けて4つあります。不景気と、人口減少、事件や事故が生じること、物件の老朽化です。不動産オーナーがどのように努力しても回避できないリスクもありますが、リスクを認識し、備えておくことで乗り切れる可能性はあるでしょう。

不動産価格が下落する4つの理由:1.不景気

景気が悪いときは、不動産に回せるお金が減少するため、全国的に地価や住宅価格が下がります。これまでにも、バブル崩壊やリーマンショックなどを契機に、不景気で物件を買う資産を持つ人が減り、融資にも制限がかかり、不動産価格は大幅に下落しました。
日本国内の景気だけでなく、海外の景気の影響も大きく受けることがありますので、不景気による不動産価格の下落に対応するのは難しいでしょう。

不動産価格が下落する4つの理由:2.人口減少

人口減少による不動産価格の下落は、人口が減少すると、不動産需要が減少するため生じます。国内全体の人口減少だけでなく、限定されたエリアの人口減少のリスクもあります。
不動産投資をした物件がある特定のエリアが不人気で価格が下落することもありえます。特に、交通利便性が悪く生活しづらい場所でありながら、何らかの流行を受けて人気のエリアとなった場合、そのエリアが飽きられてしまうと、そのエリアの不動産需要が少なくなり、価格が下落します。

不動産価格が下落する4つの理由:3.事件や事故が生じる

人命に関わる事件や大事故が物件で発生してしまうと、入居を希望する人がいなくなったり、家賃を下げざるを得なくなったりなどと利回りが下がり、不動産価格が下落してしまいます。
事故物件をまとめたインターネットサイトなどがあり、リフォームなどを試みてイメージアップを図ろうとも、なかなかイメージを払拭することができずに苦労することになります。

不動産価格が下落する4つの理由:4.建物の老朽化

老朽化しにくい物件や、老朽化しても人気を保ちやすいエリアの物件を選んだとしても、いつかは物件は朽ちていきます。建物の老朽化は避けられないのです。
建物のバルコニー部分など、一部が破損などした場合でも、物件の価格は下落します。

まとめ

不動産投資にまつわる8大リスクを知ることで、何となく不安に思っていたことが払拭されてきたのではないでしょうか。
リスクを熟知した上で回避策を選択できれば、リスクを最小限にとどめることができるはずです。
具体的に投資物件を絞り込めてきたならば、再度、どのようなリスクが生じる可能性があるか、チェックしてみましょう。

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
後藤 悦史

難解なイメージのある投資不動産の取引について、『わかりやすく』お伝えすることにこだわってます。不動産投資は、それぞれ置かれている状況、ご事情やご希望条件によりゴールへの道筋が異なります。皆様にとって最適な道標を描くヒントとなれるような情報発信を心がけます。 著者の記事一覧はコチラ
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