不動産投資のデメリットとは。そのリスク例を解説
不動産投資は「他の投資よりリスクが少ない」と紹介されていることが多い投資です。しかし、不動産投資は投資である以上、メリットだけでなくリスクとなるデメリットも存在します。この記事では、不動産投資のデメリットになり得るリスク例7選をお伝えします。不動産投資を始めようと考えたときに、メリットとあわせてご一読してみてはいかがでしょうか。
この記事の目次
不動産投資はデメリットが多い?
不動産投資は、他の投資と比べると比較的デメリットが少ない投資と言えます。たとえば、株式を売買し差額を利益とする株式投資などは「買った株式を、いかに高く売るか」のハイリスク・ハイリターンな金融投資です。
そういった金融投資と比べて、不動産投資のデメリットが少ないと言われる理由には、主に下記の2点が挙げられます。
- 手始めに不動産物件を購入するため、物件を利用して長期的な運用ができる
- 運用に失敗した場合でも不動産物件が手元に残る
上記に挙げた「不動産投資=不動産物件を運用する」という特徴は、同時に不動産投資ならではのリスクも内包しています。不動産投資で失敗しないために、不動産投資ならではのリスクを理解しておきましょう。
不動産投資のリスク例7選
不動産物件を資産とする不動産投資のリスクは、大きく分けて下記の2つの要因により発生します。
- 不動産物件の状態変化
- 賃貸経営での成功、失敗、懸念点
不動産投資ならではのデメリットとなるリスクの内容をあらかじめ知っておくことで、回避または対策が図れます。今回の記事では、特に気を付けておきたいリスク例7選をご紹介しましょう。
空室=収入が減る
不動産投資の賃貸経営におけるリスクの1つに「空室」があります。「物件に空室がある=収入が減る」ため、不動産投資において最も回避したいリスクと言えるでしょう。空室のリスクを回避するためには、「空室になりやすい物件」を知ることが大事です。
一般的に、以下のような物件は入居者が入りづらく空室になりやすいとされています。
- 立地が悪い(最寄駅から遠い、最寄り駅の路線が通勤・通学に不便、など)
- 物件の管理状態が悪い(外観・内装が古くさい、手入れがされていない、共用部分に清潔感が無い、など)
- 部屋の間取りが古い(現代の入居者のニーズと合わない、など)
- 周囲の生活環境が悪い(街灯が少ない、商業施設や病院が遠い、など)
これらのポイントを購入物件を選定する段階から意識しておくと、空室のリスクを回避しやすくなるでしょう。「元から魅力のある物件を購入する」のが資金的に難しい場合は「競合物件と差別化をはかり、入居者のニーズに合った物件にする」こともできます。一例として、昨今はリモートワークの導入や在宅勤務など、「企業へ通勤・出社する」だけではない働き方も増えています。交通の便が悪い物件に「wi-fiやネット回線が無料で使える」などの付加価値をプラスすることで「この物件なら快適に仕事できそうだ」と感じる入居者が現れるかもしれません。「空室のリスクを回避したい」と考えたときは、「自分が入居者だったら、その部屋に住みたいと思うか」を念頭に置き、空室の設備や住環境を見直してみましょう。「住みたいと思える魅力があるか」を気にかけて改善策を模索すると、空室のリスク回避につながる可能性があります。
家賃滞納、入居者のトラブル問題
不動産物件に無事に入居者が入った場合でも「家賃の滞納」「入居者同士のトラブル」などのリスクが考えられます。「家賃の滞納」によって懸念されるリスクは以下のとおりです。不動産物件を所有すると、月々の支払として以下の費用が発生します。
- 不動産ローンの返済
- 管理費、修繕積立金の支払
これらの支払額がもし家賃収入よりも上回った場合は、月次収支が赤字になってしまいます。
家賃の滞納を回避する方法には以下の2種類があります。
- 入居者管理を厳しくし、支払い能力がある入居者と契約する
- 賃貸管理会社に管理委託をおこない、家賃の立て替えをしてもらう
入居者管理を厳しくする場合は、下記のような規定を設けて入居審査をおこなうことをおすすめします。
- 勤務先、年収に一定の基準を設ける
- 連帯保証人を必須にする
- 連帯保証人の支払い能力も併せて確認する
- 連帯保証人を立てられない場合は、保証会社との契約を必須にする
連帯保証人や保証会社があれば、入居者が家賃を滞納した際でも、連帯保証人や保証会社に家賃支払いを請求できます。ただし、高齢化社会にともない、連帯保証人を立てられる人や保証会社との契約ができる人ばかりが入居希望をするとは限りません。入居審査が厳しすぎると空室になりやすいというデメリットもあるため、入居希望者の傾向もふまえてバランスを取ることが大事です。
一方、賃貸管理会社に管理委託を依頼すると入居者の家賃支払いが滞った場合、賃貸管理会社から家賃の立て替えを受けることが可能です。家賃の立て替え期間は一般的に6ヵ月~12ヵ月程度とされています。家賃の立替えだけでなく、家賃の支払い催促も賃貸管理会社側からおこなってくれ、入居者のトラブルにも対応してもらえるでしょう。しかし、賃貸管理会社に「賃貸管理費」を支払う必要があります。賃貸管理会社への管理委託を検討する場合は、メリットとデメリットを考えて決めると良いでしょう。入居者のトラブルは、家賃の滞納と違い、入居審査では防ぎにくい問題になります。賃貸管理会社への管理委託をしない場合は、注意喚起のチラシを投函したり張り紙で呼びかけるなど、穏便に改善を促す方法を取ることでトラブルを回避できる可能性があります。
物件が老朽化する
不動産投資は、物件の老朽化によって家賃が下がるリスクがあります。家賃が下がる主な要因は以下のとおりです。
- 建物や住宅設備の経年劣化
- 同価格帯の競合物件で、より立地や利便性が良い物件が増えた
- ターゲット層の減少による需要の低下
建物や住宅設備の経年劣化については、こまめなメンテナンスをおこなうことで、家賃下落を防ぐことが可能です。入居者の入れ替え時に室内や住宅設備をリフォームする、外観や共用部分の清掃を定期的におこなうなど、運用資産内で可能な範囲で物件の魅力を保っていきましょう。同価格帯の競合物件が増えた場合も、上記の対処をおこなうことで、入居者の維持につながる可能性があります。
一方で、近隣の企業、工場、大学など、人が集まる要因になっていた施設の移転や撤退によってターゲット層の需要が低下する場合は、物件の運用方針自体を見直す必要があります。ファミリー向けの部屋数の多い物件をシェアハウス可能にするなど、時代のニーズに沿った対応を意識すると、家賃下落を防ぐことができるでしょう。
資金が高額
不動産投資には、高額の資金が必要になるのも特徴です。不動産ローンを組み金融会社から融資を受けることも可能ですが、不動産投資に使用する物件購入の総額は、一般的な収入を鑑みると高額な買い物と言えるでしょう。さらに、不動産投資に用いる物件を購入する際には、物件そのものの価格に加えてさまざまな諸経費がかかります。
支払い義務がある、および支払いが発生する可能性がある経費は以下のとおりです。
- 固定資産税、都市計画税、登録免許税、印紙の支払い
- 不動産仲介会社への仲介手数料
- 不動産ローンの融資を受ける際、銀行に支払う手数料各種
- 物件への火災保険料、地震保険料
これらの経費金額は、購入物件の規模や取引相手によって異なります。中には必須ではない経費や支払いが発生しないケースも存在しますが、必要経費として考え、余裕を持った収支計画を立てることをおすすめします。
個人情報の公開が必須
不動産投資をおこなう過程では、個人情報の開示を求められる場面が出てきます。個人情報保護の観点から、これは危険なリスクの1つと言えます。不動産物件の購入を考えて不動産業者へ問い合わせをおこなう際には、氏名・連絡先・年収などの基本的な情報をはじめとして、自己資金や勤務先、家族構成に至るまで開示を求められる場合があります。
これらの個人情報は、プライバシー保護の観点はもちろん、情報を渡した相手によっては悪用されてしまうおそれもあります。
必要以上に個人情報の開示を促してきたり、何かおかしいと感じたときは、一旦連絡を保留にして相手の不動産業者について調査するなど慎重な行動を心がけましょう。
瑕疵
不動産投資をはじめようと考えた際に「瑕疵」は必ず知っておきたいリスクの1つです。「瑕疵」は「不動産物件の欠陥」を指し、売主は瑕疵(欠陥)に対して「瑕疵担保責任」という責任を負う必要があります。この「瑕疵担保責任」は、金銭的なリスクが高いのが特徴です。
「瑕疵担保責任」によって、具体的に責任を負う瑕疵(欠陥)は以下のとおりです。
- 雨漏り
- シロアリ被害
- 土壌汚染
- 居住にあたり、日常生活に支障をきたす損傷
- 給排水管が故障している
売り手として不動産物件の売買契約を締結し、物件を引き渡した際に、上記の瑕疵が見つかると、売主の瑕疵担保責任を問われます。この瑕疵が売主の責任と認められた場合は、売主は買主に対し、補修費用の支払いや損害賠償請求を受けることになります。瑕疵担保責任の期間は売主と買主の合意で決定し、一般的に3ヵ月~1年程度です。瑕疵担保責任のリスクを回避する方法には「物件状況確認書を作成する」「ホームインスペクションを実施する」などがあります。「物件状況確認書」とは、物件の各部位の損傷・不備などを記載した書類を指します。確認書の内容は仲介を担当する不動産会社によって異なり、既定のフォーマットは存在しません。瑕疵担保責任のリスクを回避するために作成する場合は、確認書の内容をあらかじめ確認し、不安がある場合はより詳細な確認書の作成を依頼すると良いでしょう。
「ホームインスペクションの実施」は、専門家による物件のチェックを指します。売主側がホームインスペクションを実施することで、事前に瑕疵を発見できる可能性が高くなります。ホームインスペクションは買主側が希望することも可能で、一般的に5万円前後の費用がかかるでしょう。
天災
不動産投資において、天災による物件被害も主要なリスクの1つです。災害によって不動産物件が損壊や倒壊してしまった場合は、物件の所有者として被害の修繕をおこなう必要があります。これらの修繕費用は、災害リスク対策ができる保険に事前に加入しておくことで、負担を軽減できます。
災害リスクに備える不動産物件への保険は主に以下の3種です。
- 火災保険
- 地震保険
- 施設賠償責任保険
「火災保険」「地震保険」は、物件購入の際に加入することが多い保険です。不動産会社から加入を勧められる場合もありますが、保険の金額や保証内容は保険会社により差があるため、比較検討をしておくことをおすすめします。「施設賠償責任保険」は、所有物件の倒壊などの二次災害によって発生した賠償金を保証する保険です。例として、「マンションの外壁が崩れて通行人が負傷した」「給排水管の損傷によって入居者の家財が故障した」等の損害が、保険適応内となる場合があります。施設賠償責任保険は比較的リーズナブルな価格で加入できる保険といえるため、火災保険や地震保険とあわせて加入しておくと安心できるでしょう。
さらに災害のリスクを軽減するには、下記の2点もチェックしておくことが重要です。
- 災害が発生する前に、物件の破損状態をあらかじめ把握しておく
- 物件の緊急時の避難ルートが適切に確保されているかを確認しておく
災害が発生して物件が被害を受けた際に「物件の破損が災害によるもの」と認定されると、災害保険の適応を受けられる可能性があります。しかし、災害発生前の物件の状態が不明の場合は「物件は災害発生前から破損していた可能性がある」と判断され、災害保険の適応範囲が変わるケースもあります。購入前はもちろん、購入後も物件の状態を定期的に確認し、常に物件の現状を把握しておきましょう。物件の緊急時の避難ルートが適切かを確認しておくことも、不動産投資において大切なポイントです。ビルやマンションの火災のニュースで「避難経路が適切に確保されていなかった」という痛ましいニュースを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。物件の破損は修繕できますが、失われてしまった人命は二度と戻りません。戸建て、アパート、マンションのいずれの場合も、災害時に入居者が安全に避難できるよう、所有物件の緊急避難経路はしっかりと確保しましょう。
事前に対策することで、回避できるリスクも
不動産投資のデメリットを知ったうえで、事前に対策を講じることで、回避できるリスクは数多くあります。リスクを知り回避に努めることで、不動産投資の知見が深まり、より安定した不動産投資の運用がおこなえる可能性もあります。不安な点はそのままにせず、「不動産投資について知識を増やすチャンス」と捉え、知識を増やしていくのがおすすめです。
まとめ
不動産投資は、他の投資と比べ「物件を扱う」という特徴に基づいた、独自のデメリットが存在します。しかし、不動産投資ならではのメリットも豊富に備えているため、デメリットだけにとらわれて不動産投資を諦めてしまうのはもったいないと言えるでしょう。
メリットとデメリットを客観的に理解したうえで「自分は不動産投資に向いているか」を考え、不動産投資にチャレンジするか否かを決めてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
TERAKO編集部
小田急不動産
鳥塚 正人
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