不動産投資
2026.08.24

大家になるリスクとは?不動産投資で起こりやすい失敗と対策

大家になるリスクとは?不動産投資で起こりやすい失敗と対策

家賃収入は安定した収益に見えますが、物件を所有し続ける限り、空室や修繕費、金利上昇などの支出リスクと隣り合わせです。大家になる際に押さえておくべき主なリスクと対策、失敗しやすい物件の特徴、投資物件の売却を検討すべきタイミングを整理します。

この記事の目次

家賃収入は安定した収益に見えますが、物件を所有し続ける限り、空室や修繕費、金利上昇などの支出リスクと隣り合わせです。大家になる際に押さえておくべき主なリスクと対策、失敗しやすい物件の特徴、投資物件の売却を検討すべきタイミングを整理します。

大家になる前に知っておきたい賃貸経営のリスク

賃貸経営では、家賃という定期的な収入が得られるものの、物件を保有すること自体に継続的なコストと損失発生の可能性が伴います。購入前の収支シミュレーションだけでは見えにくい部分も多く、大家になる前段階で押さえておくべき基本的なリスク構造を確認しておく必要があります。

家賃収入があっても安定して利益が出るとは限らない

家賃収入は表面的な数字であり、そこからローン返済、管理費、修繕費、税金などの支出を差し引いた金額が実際の利益になります。空室率の上昇や家賃下落、修繕費の発生が重なると、家賃収入があっても収支が赤字化するケースがあります。

物件を所有している間は、入居の有無にかかわらず一定のコストが発生し続けます。

物件を所有しているだけでもさまざまなコストが発生する

固定資産税・都市計画税、火災保険料、管理委託費、建物の点検費用などは、入居者の有無に関係なく毎年発生します。ローンを利用している場合は、空室期間中も元利金の返済義務が続きます。物件を保有するだけで一定の支出が積み重なる点は、収支計画において考慮すべき要素です。

これらのコストは固定費として毎年一定額が発生するのに対し、修繕費や設備交換費のように、発生時期や金額が読みにくい支出も別途存在します。リスクが顕在化した際には、こうした変動要素によって支出がさらに拡大する可能性があります。

リスクによっては物件を保有し続けるほど損失が拡大することもある

空室の長期化や家賃下落、修繕費の増加といったリスクは、時間の経過とともに収支を圧迫し続けます。特に築年数が経過した物件では、修繕費用の増加と収益性の低下が同時に進行しやすく、保有期間が長くなるほど損失が拡大する可能性があります。こうした構造を理解したうえで、どのようなリスクが存在するのかを具体的に把握しておくことが、賃貸経営の第一歩になります。

大家になる主なリスク10選

賃貸経営には、収入面・費用面・所有面それぞれに固有のリスクがあります。物件購入前の想定と実際の運営結果に差が生まれる要因の多くは、これら10のリスクのいずれかに集約されます。まず概要を一覧で確認したうえで、それぞれの内容を詳しく見ていきます。

No. リスク 主な内容
1 空室リスク 家賃収入の減少・途絶
2 家賃下落リスク 収益性の悪化
3 家賃滞納リスク 収入の未回収
4 修繕費・設備交換費リスク 支出の増加
5 大規模修繕リスク まとまった資金の必要性
6 入居者トラブルリスク 対応負担の発生
7 災害リスク 建物の損傷
8 金利上昇リスク 返済負担の増加
9 管理会社選定リスク 空室・退去率への影響
10 売却損リスク 資産価値の下落

1.空室が続き家賃収入が減少するリスク

賃貸経営における収入は入居者からの家賃に依存しているため、空室が発生すると収入が途絶えます。特に単身者向けの小規模な区分マンションでは、退去のタイミング次第で年間の稼働率が大きく変動します。

空室中もローン返済や維持費は発生する

入居者がいない期間も、ローンの返済、管理費、固定資産税などの支出は継続します。家賃収入が途絶えた状態で支出だけが続くと、キャッシュフローが悪化し、空室期間が長引くほど累積の損失も大きくなります。

賃貸需要が低下すると空室が長期化することもある

周辺人口の減少や競合物件の増加によって賃貸需要が低下しているエリアでは、募集条件を見直しても入居が決まりにくく、空室期間が長期化する場合があります。

2.家賃下落によって収益性が悪化するリスク

家賃は固定的な収入源に見えますが、周辺相場や物件の競争力によって変動し、購入時に設定した想定家賃がそのまま維持できるとは限りません。

築年数の経過とともに家賃を維持しにくくなる

建物や設備の経年劣化が進むと、周辺の新築・築浅物件と比較したときの競争力が低下し、家賃を維持したまま入居者を確保することが難しくなります。設備の古さや内装の傷みは、内見時の印象にも直結し、入居者に選ばれにくくなる要因になります。

競合物件が増えると家賃の値下げが必要になることもある

周辺エリアで新築物件の供給が増えると、入居者獲得のために家賃を引き下げる必要が生じる場合があります。家賃の下落は、物件の収益性だけでなく、将来的な売却価格の評価にも影響するため、一時的な値下げであっても収支への影響を試算しておく必要があります。

3.家賃滞納が発生するリスク

入居者が決まったあとも、家賃を確実に回収できるとは限りません。入居審査を通過していても、契約後の収入状況の変化までは予測できない場合があります。

入居者がいても家賃を回収できないケースがある

入居者の収入状況の変化や生活状況の悪化によって、家賃の支払いが滞る場合があります。滞納が発生すると、家賃収入が入らないまま、督促対応の負担が発生し、ローン返済や維持費の支払いは通常どおり続きます。

督促や退去手続きに時間と費用がかかることもある

滞納が長期化した場合、内容証明の送付、契約解除の通知、明け渡し訴訟などの法的手続きが必要になることがあり、解決までに時間と費用がかかります。政府広報オンラインによる国土交通省の調査によると、管理会社が家賃債務保証を利用するケースは約8割にのぼり、個人の連帯保証人に代わって保証会社を利用する動きが広がっています(出典:政府広報オンライン「家賃債務保証」)。

4.修繕費・設備交換費が発生するリスク

建物や設備は、時間の経過とともに劣化し、定期的な修繕・交換が必要になります。新築時には想定しにくい支出であっても、築年数の経過とともに発生頻度は確実に高まります。

給湯器・エアコン・水回りなどの設備は経年劣化する

給湯器やエアコン、キッチン・浴室などの水回り設備には、それぞれ一般的な耐用年数があり、故障や不具合が発生した場合は早急な修繕・交換対応が求められます。生活に支障をきたす設備ほど、対応が遅れた場合に退去やクレームにつながりやすくなります。

築古物件では修繕費が収益を圧迫しやすい

築年数が経過した物件では、複数の設備が同時期に修繕・交換時期を迎えることがあり、修繕費が集中的に発生しやすくなります。修繕費の増加は、家賃収入から差し引かれる支出項目として、実質的な利回りを押し下げる要因になります。

5.大規模修繕でまとまった資金が必要になるリスク

個別の設備修繕とは別に、建物全体を対象とした大規模修繕は、まとまった資金を必要とします。区分所有のマンションであれば修繕積立金として毎月徴収されますが、一棟物件や戸建てでは大家自身が資金を用意しなければなりません。

外壁・屋根・防水工事などは高額になりやすい

外壁塗装や屋根の葺き替え、屋上・バルコニーの防水工事などは、建物全体を対象とする工事であるため、個別の設備修繕と比べて費用規模が大きくなる傾向があります。修繕を先延ばしにすると、雨漏りや構造部分の劣化につながり、修繕範囲がさらに拡大する可能性があります。

修繕時期が重なるとキャッシュフローが急激に悪化することもある

外壁・屋根・設備の修繕時期が同じ時期に重なった場合、想定を超える支出が一度に発生し、手元資金が不足する可能性があります。修繕積立などの備えがない場合、金融機関からの借り入れによって資金を調達する必要が生じることもあります。

6.入居者トラブルが発生するリスク

入居者同士や近隣住民との間で発生するトラブルへの対応も、大家が担う役割のひとつです。管理会社に委託している場合でも、最終的な判断や費用負担は大家に求められる場面があります。

騒音・ゴミ・近隣トラブルへの対応が必要になることがある

生活音や共用部のゴミ出しルールをめぐるトラブル、近隣住民からの苦情などが発生した場合、大家または管理会社が入居者への注意喚起や仲裁対応を行う必要があります。対応が遅れると、トラブルの当事者ではない他の入居者の退去につながる場合もあります。

孤独死や事故などが発生する可能性もある

高齢の単身入居者の増加に伴い、室内での孤独死や事故が発生するリスクも想定しておく必要があります。発生した場合は、特殊清掃や原状回復費用が発生するほか、次の入居者募集における告知義務や家賃設定の見直しが必要になることがあります。

7.災害によって建物が損傷するリスク

建物は、自然災害によって物理的な損傷を受ける可能性を常に抱えています。立地条件やハザードマップ上のリスクだけでなく、日本全体として災害の発生自体を避けられない点も踏まえておく必要があります。

地震・台風・水害・火災などによって損害が発生する可能性がある

地震・台風・水害・火災などの災害は、建物の構造や設備に直接的な損害を与えます。

内閣府の資料によると、太平洋側の広い地域では今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が26%以上とされており、地震による建物損傷のリスクは特定の地域に限られたものではありません(出典:内閣府「特集 地震を知って地震に備える」)。

内閣府「特集 地震を知って地震に備える」より

保険ですべての損害をカバーできるとは限らない

火災保険や地震保険に加入していても、補償範囲や保険金額の上限によっては、修復費用の全額をカバーできない場合があります。特に地震保険は火災保険の保険金額の一定割合が上限として設定されているため、実際の損害額と保険金額に差が生じることがあり、差額分は自己資金で補う必要があります。

8.金利上昇によってローン返済負担が増えるリスク

不動産投資ローンを利用している場合、金利の変動は毎月の返済額に直接影響します。特に返済期間が長期にわたる物件では、金利変動の影響を受ける期間も長くなります。

不動産投資ローンの金利上昇によって収支が悪化することがある

変動金利型のローンを利用している場合、金利が上昇すると毎月の返済額が増加し、家賃収入から返済額を差し引いた手残りが減少します。返済比率が高い物件ほど、わずかな金利上昇でも収支への影響が大きくなり、収支が赤字に転じる可能性もあります。

家賃を簡単に値上げできるとは限らない

金利上昇に合わせて家賃を引き上げようとしても、周辺相場や入居者との契約条件によって、値上げが難しい場合があります。既存の入居者との契約期間中は、一方的な家賃改定ができないケースもあり、返済負担の増加分を収入側で吸収しにくい構造になっています。

9.管理会社選びに失敗するリスク

賃貸経営の実務の多くは管理会社に委託するため、管理会社の力量が経営成績に直結します。契約時の説明や実績だけでなく、契約後の対応姿勢まで見極める必要があります。

入居者募集力によって空室期間に差が出る

入居者募集における広告掲載の範囲や仲介会社とのネットワークは、管理会社によって差があります。募集力が弱い管理会社に委託した場合、同条件の物件と比較しても空室期間が長期化する可能性があります。

管理の質が入居者満足度や退去率に影響する

設備トラブルへの対応速度やクレーム対応の丁寧さは、入居者の満足度と継続入居の意向に影響します。管理対応の質が低い場合、更新のタイミングで退去率が上昇し、結果的に空室リスクが高まることがあります。

10.物件価格が下落して売却損が発生するリスク

賃貸経営を続けた先には、いずれ物件の売却や相続といった出口を検討する場面が訪れます。保有中の収支だけでなく、売却時に想定される評価額の変化も併せて把握しておく必要があります。

築年数や収益性によって投資物件の評価額は変化する

投資物件の評価額は、築年数の経過や周辺相場だけでなく、実際の家賃収入や稼働率といった収益性の指標によっても変動します。空室率の上昇や家賃下落が続いている物件は、購入時よりも評価額が下がる場合があり、売却を検討する時期の判断材料になります。

ローン残債によっては売却しても手元に資金が残らないことがある

売却価格がローンの残債を下回る場合、売却代金だけでは完済できず、自己資金での補填が必要になることがあります。売却を検討する際は、複数の不動産会社から査定を取り、査定価格とローン残債の比較を事前に行っておく必要があります。

大家として失敗しやすい人・投資物件の特徴

ここまでのリスクが顕在化しやすい大家や物件には、共通する傾向があります。物件選びの段階から意識しておくことで、購入後のトラブルを未然に防ぎやすくなります。

特徴 内容
表面利回りだけを見て物件を購入している 表面利回りには管理費・税金・修繕費などの支出が反映されておらず、購入後に実際の収支が想定を下回ることがある
空室や修繕を想定した資金を確保していない 空室期間中の返済や突発的な修繕費に備える予備資金がなく、リスクが顕在化した際に資金繰りが行き詰まりやすい
賃貸需要が低下しているエリアに物件を所有している 人口減少や周辺施設の撤退などで需要が低下しており、募集条件を改善しても空室が長期化しやすい
築古で今後大きな修繕が控えている 大規模修繕や設備の一斉交換時期が近づいているにもかかわらず、修繕計画の把握が不十分だと想定外の支出に直面する
ローン返済比率が高くキャッシュフローに余裕がない 家賃収入に占める返済額の割合が高く、空室・家賃下落・金利上昇のいずれの影響も受けやすい構造になっている
購入後に収支や資産価値を見直していない 購入時の収支計画のまま運営を続け、相場や資産価値の変化に気づくのが遅れやすい

大家になるリスクを抑えるための対策

前述のリスクは、いずれも事前の把握と定期的な確認によって、影響を抑えることができます。リスクの発生自体をゼロにすることは難しくても、早期発見と準備によって損失の規模を小さくすることは可能です。

対策 内容
賃貸需要・家賃相場の定期確認 周辺エリアの人口動態や成約家賃の推移、競合物件の募集条件を確認し、空室・下落の兆候を早期に把握する
実質利回り・キャッシュフローの把握 管理費や税金、修繕費を反映した実質利回りと、月々の手残りであるキャッシュフローを把握し、収支の実態に基づいた運営判断を行う
空室期間を想定した資金の確保 一定期間の空室が発生しても返済や維持費を支払い続けられるよう、数か月分の予備資金をあらかじめ確保しておく
修繕履歴・今後の修繕計画の確認 過去の修繕内容を記録し、外壁・屋根・設備の交換時期を把握したうえで、大規模修繕に向けた資金準備を計画的に進める
家賃保証会社の活用 滞納が発生した場合も保証会社の立て替え払いを受けられる。管理会社の多くが導入しており、業界内でも標準的な備えとなっている
信頼できる管理会社の選定 複数の管理会社から募集実績や管理内容、対応体制について説明を受けたうえで委託先を選定し、空室・退去リスクを抑える
資産価値の定期確認 家賃相場や周辺の取引事例をもとに資産価値を確認し、収支の変化と合わせて売却を検討すべきタイミングを見極める

対策だけでは避けにくい「物件を保有し続けるリスク」もある

前述の対策を講じても、物件を長期間保有し続けること自体に伴うリスクは完全には避けられません。時間の経過とともに進行する要因は、日々の運営努力だけでは食い止めきれない部分があります。

築年数が進むほど修繕費が増加しやすい

建物や設備の劣化は、築年数の経過とともに進行します。保有期間が長くなるほど、大規模修繕や設備交換の頻度が高まり、一回あたりの工事規模も大きくなりやすいため、修繕費の総額は増加する傾向があります。

家賃下落と空室率上昇が同時に起こることもある

築年数の経過による競争力の低下は、家賃の下落と空室率の上昇を同時に引き起こす場合があります。片方だけであれば影響は限定的でも、両者が重なると収入の減少幅がより大きくなります。

収益性の低下によって売却価格にも影響する

家賃収入や稼働率の低下は、投資物件としての収益性を示す指標を悪化させます。収益性を基準に評価される投資物件では、収益性の低下がそのまま売却価格の下落につながる場合があり、保有を続けるほど売却時の選択肢が狭まる可能性があります。

売却を先延ばしにすることが必ずしも得とは限らない

物件を保有し続ければ将来的に収支が改善するとは限らず、修繕費の増加や資産価値の下落が先行するケースもあります。保有継続と売却のどちらが有利かは、収支の見通しと資産価値の推移を踏まえて判断する必要があり、判断材料としては次の売却タイミングの兆候が参考になります。

投資物件の売却を検討したほうがよいタイミング

収支や物件の状態に一定の兆候が表れた場合は、保有を継続するだけでなく、売却を選択肢のひとつとして検討する時期といえます。複数の兆候が同時に見られる場合は、より早い段階での検討が求められます。

兆候 判断のポイント
空室率が高くなっている 募集条件を見直しても改善しない場合、エリアの賃貸需要そのものが低下している可能性がある
家賃を下げなければ入居者が決まらない 物件の競争力が低下しているサインであり、今後も下落傾向が続く可能性を踏まえた判断が必要
大規模修繕の時期が近づいている まとまった修繕費を投じて保有を続けるか、修繕前に売却するかを比較検討する必要がある
修繕費や管理費の増加で収益性が低下している 実質利回りの低下を踏まえ、収益性の観点から保有継続の妥当性を見直す
毎月のキャッシュフローが赤字になっている 手残りが恒常的にマイナスの場合、収支構造そのものの見直しが必要になる
周辺の賃貸需要が低下している 人口減少や再開発計画の停滞など、将来的な収益性のさらなる悪化を見込んだ判断が求められる
物件価格が高いうちに利益を確定したい 査定価格が購入時より高い水準にある場合、価格が将来下落する可能性を踏まえて利益を確定する選択肢もある

この記事を書いた人

著者写真 TERAKO編集部
小田急不動産
飯野一久

「一期一会」がモットーです。これまでの投資不動産の売却・購入・資産の入れ替えの実務を通じて得られた知見を、少しでも、皆様に、わかりやく、丁寧にお伝え出来たらと思っております。 著者の記事一覧はコチラ
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